病院長あいさつ
社会保険直方病院 病院長 田中 伸之介 |
令和6年度(2024年度)の始まりに際しご挨拶を申し上げます。
例年より少しばかり遅れていた桜の開花、4月上旬には一斉に花咲かせ、ここ数日は気温も上がって待ち望んだ穏やかな春の到来を実感しています。
今年度の始まりには幾つかの特別な思いがあります。2020年1月に日本で初めて確認された「新型コロナ感染症」、未知のウィルスとして「2類相当感染症」に指定され、厳しい隔離制限での対応が開始されました。発熱外来の設置、感染患者さんの受け入れ、ワクチン接種、内外で多くの会議や検討がなされ緊張の日々が続きました。その後、紆余曲折を経て2023年5月にはインフルエンザ同等の「5類感染症」に格下げされ、以後も順調に収束傾向に向かい、この4月からは特例措置も完全撤廃され通常診療へと移行しました。収束傾向はウィルスの弱毒化、ワクチン接種の効果、治療薬の開発、抗体保有率の増加などが関与していると推察されますが、とにもかくにも4年にわたるウィルスとの闘いは人類の英知で一旦の収束を迎えたと思われます。晴れやかな気分です。
今年「辰年」は景気上向きの年とされ、事実、アフタ-コロナとも相まってインバウンド需要の回復や日経平均株価の上昇など景気は回復基調にあるようです。しかしながら物価高騰の波は収まらず、実質賃金は低下しており、必ずしも景気回復を実感するには至っていません。4月から運送業界でも働き方改革が本格始動し、運転手不足での経済循環への影響が懸念されています。医療界においてもこの4月より「医師の働き方改革」が本格スタートしました。時として病院に寝泊まりしながら、24時間昼夜を問わず患者さんのためにと病院漬けになっていた時代は遠く過去のものとなりつつあります。当然ながら長時間労働から解放された医師の心身状態は改善されるでしょう。しかし一方で労働時間の規制、短縮で救急医療現場へのしわ寄せが来ないか懸念されます。医療現場もいろいろな創意工夫でこの改革に向き合う必要がありそうです。
そうした中、今年は診療報酬と介護報酬の同時改定の年です。医療・介護報酬のGDP比は右肩上がりであり、少子高齢化も待ったなしのなか課題は山積状態です。今回の改定が少しでもこの問題を解決する糸口となることを期待しています。
私たちは新型コロナ禍の4年間、感染症の恐ろしさを実感しながら、未知なる脅威への対応、有事に対する取り組み、職種間相互の信頼、理解、協力の大切さを再認識し、医療者としてさらに大きく成長したように感じています。今年度も医師、看護師を含め多くの医療スタッフを迎えることができました。医療介護を取り巻く環境が大きく変化する中、多職種のエネルギーを結集して患者さんのため地域医療のために精一杯頑張りたいと思います。どうぞ皆様、今年度もよろしくお願い申し上げます。
社会保険直方病院 病院長 田中 伸之介