血管外科・透析外科
当科で現在実施している手術は主に血管の手術で、対象疾患としては以下のようなものがあります。
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①閉塞性動脈硬化症
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足の冷感やしびれ感、または、ある一定の距離を歩行したときに起こり、しばらく休憩すると治まる‘ふくらはぎ’の疼痛(間歇性跛行)が主な初期症状です。ただし、進行すれば安静時にも疼痛が出現しますし、さらに悪化すれば潰瘍を形成したり、最悪の場合壊死に陥ることもあります。
基本的な治療は運動療法と薬物療法です。薬は内服薬が第一選択ですが、効果が現れるまでに少し時間がかかります。注射薬は内服薬に比べ効果が強くある程度即効性がありますが、頻回の通院や入院を必要とします。薬物療法が無効の場合は、血行再建術や血管内治療(バルーンカテーテルによる血管形成術PTA)や外科的治療(バイパス手術)を行います。 -
②急性動脈閉塞症
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心房細動という不整脈や閉塞性動脈硬化症がある場合に発症しやすく、突然動脈が閉塞し下肢または上肢のしびれ感や疼痛が出現します。進行すると手足の感覚がなくなり運動障害を伴います。早期の血栓除去が必要です。
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③末梢動脈瘤
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好発部位は膝窩で、皮下に拍動性の腫瘤を触知します。ほとんどが無症状ですが、血栓閉塞することがあるので予防的に切除する場合があります。
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④下肢静脈瘤
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長期の立ち仕事や妊娠で発症することが多く、下肢のミミズ腫れのように浮き出た血管が特徴です。症状は足がむくむ、だるい、重い、ほてる、つるなど軽症のことが多く、進行すると色素沈着や潰瘍を伴います。美容上の問題もあります。軽症の場合は医療用弾性ストッキングの着用で経過を見ますが、重症の場合は手術が必要です。
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⑤深部静脈血栓症
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エコノミークラス症候群ともいわれ、飛行機や列車での長時間の座位や長期臥床により発症しやすい疾患で、静脈が血栓で閉塞するため片方の下肢全体が数日でパンパンに腫れます。この血栓が肺まで流れ塞栓症を合併すると生命にかかわる事態に陥ります。抗凝固療法が必須ですが、塞栓症を伴っている場合は手術が必要になることもあります。
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⑥末期腎不全
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血液透析が必要な場合、上肢の動脈と静脈を吻合する内シャント造設術を行います。
当科における血液透析用内シャント造設術
糖尿病が原因で腎機能が悪化し、人工透析導入に至る患者数は増加の一途ですが、その寿命は医療技術の進歩によりますます延びています。したがってより長期間使用できるシャントの作製が望まれますが、糖尿病患者さんの血管は脆弱であることが多いため、当科では少しでもシャントを多く造ることができるタバチエール手術(血管の吻合を親指に近い手首で行う)を積極的に採用しています。この手術では創が衣服で隠れにくいのですが、創自体が小さく(2cm程度)痕も目立ちません。以前は開存率(術後どれくらいの期間血管が閉塞しないかという確率)が悪いと言われましたが、厳密な手術を行えば他の術式に劣ることはありません。血管が細くなければ、是非この方法でシャントを造られることをお勧めします。(糖尿病がない方も同様です。)
また、何回もシャントの手術を行い、もう上肢には造設する場所がなくなった場合、当科では大腿に人工血管を植え込む手術もしています。